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【雑記】実写版『進撃の巨人』は、まったく別のストーリーになる可能性が高い?

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三浦春馬、実写版「進撃の巨人」に主演 「エヴァ」貞本氏デザイン担当 (デイリースポーツ) - Yahoo!ニュース

「進撃の巨人」主演は三浦春馬!ついに実写映画化が本格始動 (1/3ページ) - 芸能社会 - SANSPO.COM(サンスポ)

三浦春馬、実写版「進撃の巨人」に主演!長崎・軍艦島での撮影を予定 : 映画ニュース - 映画.com

 

 このニュースが報じられて各所で大騒ぎな今日この頃だが、いずれの記事にも三浦春馬が「エレン役に決定した」とは書かれていない。「圧倒的な力を持つ巨人に立ち向かう青年役」として「主演する」と報じられただけだ。

 

 この記事、そして各所の情報から察するに、実写映画版『進撃の巨人』は、原作から世界観や一部の設定のみを借用した、まったく別の物語になる可能性が高いと僕は見ている。

 つまり、エレンやリヴァイといったお馴染みのキャラクターすら出てこない可能性もある。

 

 大作漫画の実写映画化といえば、近年では『20世紀少年』『SPACE BATTLESHIP ヤマト』『ガッチャマン』などの失敗作が思い浮かぶが、SFながらも基本的には日本的風景の延長線上の世界観で構築されていたこれら原作とは違い、『進撃の巨人』は、中世ヨーロッパを思わせる舞台にスチームパンク要素が足されたようなその見た目からも分かるとおり、そもそも日本で実写化すること自体、明らかに無理がある(たとえば各キャラクターを日本人俳優が演じるだけで、すでにヤバいことになるのは目に見えている)。本来ならギレルモ・デル・トロに頼んで5億ドルくらいかけて『ロード・オブ・ザ・リング』よろしく三部作で映画化するべきだろうが、日本でやると決めたのだからそこは仕方がない。そこでどんな手を使えば良いかと考えれば、一言でいえば「原作を再現する」ことをやめる、つまりまったく新しい『進撃の巨人』を一から作り出すしかないのではないかと思う。

 

 ここでのポイントは、まず監督に抜擢されたのが樋口真嗣だということ。樋口監督といえば一般的には『ガメラ』や『日本沈没』などが有名だが、注目すべきは、彼はもともとSPACE BATTLESHIP ヤマト』の監督に指名されながら、途中で降板した経緯があるという事実だ。しかも、当初樋口監督が考えていたのは、ヤマトが建造されて発進するまでの物語、すなわち宇宙戦艦ヤマト」という作品の原点に立ち返り、そのコンセプトを根底から見つめ直そうとする試みだったらしいのである。

 結果的には人間ドラマを重視しようとしたあまりに製作サイドとの折り合いがつかず、VFX重視の山崎貴監督にバトンタッチしたと言われているが、今回、ヴィジュアルに徹底してこだわる中島哲也監督が降板し、その引き継ぎを樋口監督が任されたという経緯には、映画化に際しての製作サイドの意向を見てとることができるような気がする。

 

 もうひとつのポイントは、脚本に渡辺雄介と並んで町山智浩がクレジットされているということ。映画野獣・町山智浩といえば無論、日本で最も信頼できるクラスのシネフィルではあるが、彼はまた、漫画原作を映画化することの難しさを認識している人物でもある。

 堤幸彦監督の映画『20世紀少年』三部作について、09年に「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」内で行われたライムスター宇多丸町山智浩の対談がある(詳しく知りたい方はニコ動などで探してみてください)。この中で映画版『20世紀少年』は完全な失敗作であると結論づけられているが、町山はその原因について、引き延ばしに引き延ばしを重ねて長編化せざるを得ない連載漫画システムの状況、そうしたソープ・オペラ的なストーリーをそのまま映画化することの問題点などを挙げ、非常に的確な分析を行っている。すなわち、町山智浩は連載漫画としての『進撃の巨人』の面白さを、そのまま映画的な面白さに繋げることはできないと認識しているのである。

 

 なので、脚本には大幅な、それこそ進撃の巨人』の世界を根底から問い直すレベルの改変が行われてもまったく不思議ではないどころか、むしろそうでもしなければ『実写版・進撃の巨人』は作れないはずである。単に原作の猿真似をしようとしたところで、それは金を掛けた新春かくし芸大会にしかならない。軍艦島ロケや、キャラクターデザインを貞本義行に担当させるなどの布陣も、そうした「まったく新しい『進撃の巨人』」を作るためだと考えれば合点がいく。

 

 まぁぶっちゃけて言うなら、町山さんの手が入るんならそうアレな作品はできないでしょう、ってことである。(謎の信頼感)

 

 それこそ、原作の舞台設定よりはるか昔、「壁」が作られるまでの物語ということも考えられるし、もしくは「外敵の侵入で苦境に立たされる人類」という昔ながらのコンセプト部分を拡大し、現代の日本を舞台に、日本人のキャラクターが立体機動装置を装着して海からやって来た巨人に立ち向かう話になってもまったくおかしくない(お、パシフィック・リムっぽいぞ!)。むしろ、そうした二次創作的な設定であれば原作と別物として楽しめる可能性が広がるし、正直な話、結構観てみたいと思う。

 

 観終わったあとで原作の『進撃の巨人』を紐解いたときに、これまでとは別の視点が加わっている作品、これまでとは別の楽しみ方を再発見させてくれるような作品に仕上がっているとしたら、実写版『進撃の巨人』に勝算はあるはずだ。

 何にせよ、僕は結構楽しみにしている。続報を待ちたい。