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【書評】これほど「フェア」なミステリが、どこにある?ー倉知淳『星降り山荘の殺人』

 

星降り山荘の殺人 (講談社文庫)

星降り山荘の殺人 (講談社文庫)

 

 

 ミステリにおけるトリック、特に叙述トリックは、しばしばフェア/アンフェア論争を呼び起こすことはよく知られている。古くはアガサ・クリスティ『アクロイド殺し』に関して当時のミステリ界を二分する大論争が勃 発したことは有名であるし(ヴァン・ダインは完全否定の立場だった)。


 本作『星降り山荘の殺人』も、論争とまでは行かずとも、読者の意見が真っ向から対立する作品として有名である。雪に閉ざされた山荘に集まった怪しい面々。殺人事件が起き、探偵が推理するというごくごくスタンダードなミステリながら、ラストの想定外の仕掛けに「こんなのはアンフェアだ」「いや、フェアだ」と評価を二分することになったのだ。


 ぼくは「面白ければいいじゃん」というスタンスである。フェアかアンフェアかなんて基準なんか所詮恣意的なものなのだから統一できるわけがないし、アンフェアと結論づけたところでこの作品が絶版 になるわけでもない。そんな議論に付き合っていられるほど暇ではないのである。


 んで実際、この作品はめっぽう面白かった。というわけでぼくは本作を肯定する。
 ミステリ初心者から、かなりのミステリを読み込んだマニアまで、誰もが楽しめて、誰もが騙されてしまう。 作者の文章にはひとつも嘘は混じっていない。紹介文にあるように、あくまで真正面から堂々と読者に勝負を挑む、超正統派の本格推理長編だ。そこに何の不満があるというのだ。


 「正統」であるということ、それを「フェア」と言い換えても、この際差し支えはあるまい。 ならば言おう。“これほどフェアなミステリが、どこにある?”と。