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ノラブログ。               

 
 
 
 
 

『ピクセル』-オヤジもガキも一緒に楽しめるファミリーコンピュータ・ムービー

 

ピクセル(2015・米/吹き替え3D)

 

1982年、NASAアメリカ航空宇宙局)は地球外生命体に向けて当時流行していたゲームを収録した映像などを友好目的として送った。だが、それを見た異星人はメッセージを「果たし状」と誤解してしまう。そして2015年、異星人たちは映像を基にゲームのキャラクターを兵器として再現し、地球に送り込んだ。物質をブロック(ピクセル)に変える能力で兵器が世界のあらゆるものをバラバラに分解していく中、かつての最強オタクゲーマーが立ち上がる。

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79点

 


ひとこと:たのしい(`・ω・´)

 

 

 


懐かしのパックマンやドンキーコング、ギャラガまで登場! 映画「ピクセル」予告編 - YouTube


 予告の時点で「いやこれ絶対面白いやろ」とは思いつつ、アメリカ本国では低評価(たぶん主演がアダム・サンドラーだから)ということで若干身構えて観に行ったんですが、心配無用。観客席から爆笑も起こる、たいへん愉快な映画体験でありました。

 

 


PIXELS by Patrick JEAN (OFFICIAL BY ...

 元ネタはこの短編ムービーなんですね。

 

 さて予告でだいたい分かると思いますが、お察しの通り、大味バカ映画です。

 脚本も『ジュラシック・ワールド』なんぞ比じゃないレベルでツッコミ所満載(ただの電機屋である主人公が平気でホワイトハウスの中をウロウロする、大統領好き勝手に行動しすぎ、2日で完璧な対宇宙人兵器を作っちゃう有能すぎる米軍自分たちが絶対有利なのになぜか譲歩してくれる優しい宇宙人etc)ですが、んなことに文句を言ったって不毛なだけ。こまけぇことはいいんだよ!バトルシップ』を観て「リアリティが~」とかほざくクソバカイ○ポ野郎と同様、ガタガタ言うやつの口にはチキン・ブリトーでも詰め込んでおけばいいんです。 

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 とはいいつつ、面倒な工程(ゲームが地球を攻撃しているという事実を政府首脳に納得させる過程とか)を思い切ってすっ飛ばしたり、会話の端々にギャグを散りばめて「説明」シーンでも飽きさせない工夫をしていたり、大味といいつつも脚本、意外と練られています。普通じゃ物語が停滞してしまうはずの序盤の会議シーンでは思わず腹を抱えて笑っちゃったりして、さすがアメリカはコメディの作り方が上手いなぁと感心しました。

 

 ところで本作、いわゆる「オタクたちのワンス・アゲイン」ものに分類できると思うのですが、実はそこはあんまり主眼じゃないという印象。
 かつてアーケードゲームで輝かしい記録を残しながらその能力を活かせず、現在は平凡な生活に甘んじている主人公たちが地球のピンチに駆けつけ、ヒーローとして返り咲くという粗筋自体はたしかに燃えるんですが、たとえば主人公たちの現在はそれほど悲惨に描かれているわけじゃないし、比較的早い段階で周囲の人たちに能力を認められ讃えられちゃうので、「虐げられていたオタクの勝利」という高揚感はクライマックスのカタルシスにあんまり繋がってないんですよ。

 

 しかしこの映画の良さは、そういうオタク礼賛要素は、あくまで映画のスパイスとして副次的要素に抑えた点にあります。すなわち、マニアックな「一部の人向け映画」ではなく、「大人も子供も、オタクもそうでない人も、みんなが楽しめる」作品に仕上げたことこそが、この映画の偉いところなのです。

 

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 本作のメインとして扱われるのは、80年台前半のアーケードゲーム。僕はゲーセン族ではないし、この世代でもありませんが、何度か足を踏み入れたやかましい電子音が炸裂するあの場所で、不思議な一体感に巻き込まれたことがあります。

 対戦するプレイヤーの両側に、たまたまその場に居合わせた群衆が一人、またひとりと集結する。彼らの研ぎ澄まされた技術、挙動の一挙一動に驚き、見惚れ、そして喝采を送る。顔も名前も知らない彼らが、「ゲーム」というただひとつの接点で繋がり、一瞬一瞬の感動を共有する。そこには確かに、彼らを繋ぎ止める「何か」がある。


 この映画が目指したのは、あの一体感ではないでしょうか。そして僕が観た限りでは、この映画の客たちはみな、あのゲーセンの群衆と同じ目をしていました。リアルタイムであのゲームを体験していそうな中年男性も、そして生まれた時からベビーベッドの横にPS3があったであろう子供も、エンドクレジットが終わって席を立つ彼らが、みな一様に楽しそうな顔をしていたのが心に残っています。

 

 とかくゲームってのは世代間対立を生みやすいジャンルだと思うんですが、この映画はそういう不毛な争いをしている人たちに「おまえらゲーム好きなんだろ?じゃあ楽しくやろうぜ!」ってシンプルな呼びかけをしているようにも見えますね。
 クライマックスで、これまでのやり方(パターンの暗記)が通用しなくなった主人公サムが取った行動。そこに「昔は良かったと嘆くのではなく、いまを生きよう、未来に目を向けよう」という作り手のメッセージを感じてしまう、というのはちょっと穿った見方でしょうか。
 

 そういえば吹き替えの柳沢慎吾ですが、あのかすれた中年声が意外とハマってるなーと好意的に見てました。「あばよ」のアドリブ(たぶん)には賛否あるようですが、神谷明もノリノリでアニメネタを盛り込んでたし、いいんじゃないですかね。日本語版の主題歌(8ビットボーイ/三戸なつめもエンドロールの楽しい映像とマッチしていて良かったです。


三戸なつめ 『8ビットボーイ』 - YouTube

 

 あと余談ですが、ツイッターで検索してみたら、作中に登場する岩谷徹教授(パックマンの生みの親)が本物だと思ってる人が意外と多くて吹きました(さすがにご本人に「このビッチを殺せぇぇ!」とか言わせられないでしょ)。岩谷教授を演じているのはデニス・アキヤマさんという日系人俳優の方。航空事故ドキュメンタリーの『メーデー!』シリーズの再現ドラマなどによく出てる人ですね。岩谷さんご本人は、冒頭でちょっとだけカメオ出演しています。

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 本人か!?と勘違いする人が多いのも頷ける似せっぷり

 

 

 


 それでは最後に、漫画『かってに改蔵』(16巻)より引用。

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 そう、まさしくこの映画は、任天堂が目指した(かもしれない)、家族みんなで楽しめる「ファミリー」コンピュータを、スクリーンで実現したのです。