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天才?凡才?堤幸彦

 

1月25日「天才?凡才?堤幸彦

『サイレン 〜FORBIDDEN SIREN〜』(06・日)を観る。同名のホラーゲームの映画化だが、監督が『TRICK堤幸彦ゆえかどうにも怖くない、というか、おちゃらけテイストが強い。

 

・このひと、基本的にモブの演技のさせ方が下手である。本作を観た者は、まず冒頭の消防士たちの大袈裟な台詞の応酬にドン引きするだろうし、その後の港のシーンでの島民たちのたたずまいに爆笑するはずである(特に後者、TRICKの「チーン」という効果音が入ってもまったく違和感がないほどのギャグシーンである)。いっそ山田奈緒子上田次郎を登場させたほうが面白かったんじゃないのか。

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・駄作メーカーとして映画評論家から嫌われまくっている堤監督であるが、本作はともかくとして、ぼくはこのひと、決して嫌いじゃない。『IWGP』は日本ドラマ史を塗り替えた記念碑的作品だし、去年公開の『天空の蜂』をはじめ、『明日の記憶』『包帯クラブ』『自虐の詩』『はやぶさ/HAYABUSA』など、スクリーンでもなかなかの秀作を撮っていたりするのだ。

天空の蜂 [DVD]

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・来た仕事は基本的に断らない主義らしい。それゆえか作品の出来にはムラがある。『天空の蜂』のような力の入った作品があるかと思えば、日本的チープさの極地みたいな本作も作ってしまう。ひとりの人間のなかに天才と凡才が同居するような印象。それもまた人気者であるゆえの必然なのかもしれない。

 

 

 

1月26日「嘘つきの生き方」

ニュースの天才(03・米)を観る。アメリカの権威ある週刊誌で実際に起きた大規模な記事捏造事件を題材にした社会派スリラー。野心に燃えて捏造に手を染める若手スター記者・グラスをヘイデン・クリステンセン、彼の嘘を追求する編集長をピーター・サースガードが演じる。 



・グラスの捏造はいくらネット黎明期とはいえあまりにも杜撰なものだったが、実際これにアメリカ中が騙されてしまったのだから仕方がない。聡明で人当たりが良く、誰からも好かれる好青年だった彼の化けの皮が剥がれていく過程はスリリングかつ痛快だ。嘘が完全に明るみに出たあとも、自己弁護のためにさらに嘘を重ねる彼の往生際の悪さったらもう見てらんない。ヘイデン・クリステンセンの熱演が光る。

 

・DVDには特典として、本物のグラスや編集長をはじめ事件の関係者たちへのインタビューが収録されている。口では謝罪の言葉を重ねるグラスだが、どうもたいして反省しているようには見えない。天性の嘘つきなんだろうなぁ。その後、彼は嘘をつき続ける記者を主人公とした小説を出版したそうな。転んでもただでは起きないということか。

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1月27日「恐怖とシュール」

・『7500』(15・米)視聴。清水崇監督のハリウッド作品第三弾。飛行機を舞台にしたホラーである。

 

・アメリカでも日本でもずいぶん評判が悪いのでまったく期待せずに観たが、存外楽しめた。オチ自体はありがちであるが、そこに東洋的死生観がちょっぴり加味されているのは清水監督らしい。

 

・前半のパニック描写なんかは普通にリアルな恐怖だし、よくできてる方だと思う。逆に監督お得意のびっくり描写は完全に食傷気味で、もはやダサいというかシュールの領域に入っている。ラストシーンなんかほんとひどい。こういう細部をもっとブラッシュアップすれば、なかなか見応えのある作品になっていたのに、惜しい。

 

・物語を面白くかき乱してくれそうなキャラクターがたくさん登場するわりにはあまり動いてくれないし、キャラ造形も雑。あんな潔癖症の奥さんが、死人の荷物あさろうって提案にあっさり賛同するか?

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