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【書評】真冬が舞台なのに暑苦しい、変な小説―『人間動物園』(連城三紀彦)

書評

 

人間動物園 (双葉文庫)

人間動物園 (双葉文庫)

 

  華麗な筆致と技巧的な作風で知られた連城三紀彦が、久々に本格ミステリに取り組んだとして話題になった一冊。政治家の孫娘が誘拐され、被害者宅の至る所に盗聴器が仕掛けられた状況下で追いつめられる母親と警察、そして犯人の攻防を精緻に描く。

 

 

 大雪で都市機能が麻痺した極寒の一日を舞台としているにも関わらず、この小説、やたらめったら暑苦しい、というか息苦しい。

 

 それは一文が妙に長く、文意が掴み辛いという独特の文体のせいでもあるし(ゆえに読むのに時間がかかる)、被害者宅に入れないという異様な状況下で苦闘する警察官たちを物語の中心に据えているがゆえの緊迫感からでもある。これを読み辛いととるか、重厚な作風ととるかで評価は分かれるだろう。

 

 

 物語自体はさすが名匠・連城三紀彦だけあって非常に凝ったもので、その道具立てといい、展開といい、いずれも一筋縄ではいかない、知的なスリルに満ちたものとなっている。

 

 終盤で二転三転したあげく、思いもよらぬところに着地するラスト、「誘拐」という題材にまったく新しい視点を持ち込んだ立体的な構成も魅力的だが、やはり本作の最大の特徴はその見事なタイトルだろう。誘拐事件を扱ったサスペンスが、なぜ「人間動物園」なのか、それは読んだ者のみに明かされる。

 

 

 しかし、かように企みに満ち、その技巧の妙を堪能できる作品でありながら、読後感はとても爽快とは言いがたい。

 それは本作に用いられた数々のレトリックやミステリ的仕掛けが、必ずしもそのまま小説としての面白さに結実していないためだ。このへんが「小説」というものの難しさなのかな。 

 

 もう少し作品の敷居を下げて、より一般読者を拒まない作風に仕上がっていれば、誘拐サスペンスの金字塔として多くの読者に幅広く受け入れられたかもしれない。そういう意味では、「傑作」になり損ねた、非常に惜しい作品であるとも言えよう。