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【新作映画レビュー】過去最高に面倒臭いマーク・ウォルバーグとランデヴーする悪夢の94分間/『マイル22』感想


【2019年:3本目】


マイル22

 

 

 

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36点

 

 

 


ひとこと:
とっ散らかりすぎ。

 

 

 


最近はマーク・ウォルバーグ主演映画ばかり撮っているピーター・バーグの新作。


ここんとこマジメな実録もの(『ローン・サバイバー』『バーニング・オーシャン』『パトリオット・デイ』)で続けてタッグを組んでいたこのコンビ初のオリジナル・フィクション作品です。

ローン・サバイバー(吹替版)
 
パトリオット・デイ(吹替版)
 

 

 

まぁ結構期待して観に行ったわけですが、結論から言うと、どうした、ピーター・バーグですね。

 

いや、最近批評家筋からも評価が上り調子なのはいいけれど、どうもかしこまった「いい映画」ばかりだったんで、そろそろ『バトルシップ』のようなボンクラ映画が懐かしいよ…という映画ファンの期待に応えてくれたのは嬉しい限りなんだけど、出来までボンクラにしろとは誰も言ってないよ的な。

バトルシップ (字幕版)

バトルシップ (字幕版)

 

 

 

まー何が残念って、話が散らかりすぎですね。
この映画、94分しかないんですよ。ストーリーも、敵の攻撃をかい潜りながら要人を無事に送り届けるっていう、昔ながらのシンプルな一本道。なのにこれがあなた、分かりにくいったらありゃしない。

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原因のひとつとしては、敵とのバトルという本筋の合間に、(おそらくすべての事態が終わったあとに)主人公マークが事件のことを振り返って語るみたいな「未来からの視点」シーンがちょこちょこ入ってくるという、やや変則的な構成を採用していることがデカい。いや、こういう構成そのものは珍しくはないし(『ソーシャル・ネットワーク』とか、あと厳密には違うけど『バッド・ジーニアス』とかね)、一応オチから逆算すれば、この構成自体が若干のミスリードを誘うという作り手の狙いも分からなくはないんだけど、なんせこの「未来からの視点」パートのマークがやたら観念的なことしか言わないから内容が全然頭に入ってこないし、ひっきりなしに挿入されるおかげで本編のストーリーもアクションもそのたびにいちいち中断されてノイズだし、はっきり言って邪魔。全部観終わってみても、うん、やっぱりこの部分いらないんですけど!?っていう。

 

 

で、そうそう、マークですよマーク。マーク・ウォルバーグ。

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もう40代も後半なので最近は「落ち着いた大人」役も多いんだけど、もともと不良上がりということもあって、口とガラの悪さで一時期ハリウッドを席巻していた(してないか)マーク先輩。今作で彼が演じるジェームズ・シルヴァという役柄、過去の彼の主演作の中でももっとも素に近そう。すなわち、たいへん怖いし面倒臭い。あんまり周りをうろついてほしくないタイプ(失礼)。

 

 

 

まぁとにかく口は悪いわパワハラかますわ暴力に訴えるわでオラこんな上司のいる職場で働くのは嫌ですね絶対。こいつが主導する計画なんて絶対にロクなことが起きないと思ったらやっぱりというか案の定というかロクなことが起きねえし。ナチュラルに死んでいく名もなきモブ同僚たち、かわいそう。あと、変なヅラ被らされてるジョン・マルコヴィッチもかわいそう。

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そのくせ、わりと無能。そもそも、車で護送するにしてももっとやり方なかった?マルコヴィッチも期待させといてナビタイム程度の機能しかねえし。

 


なんか見た目は『ザ・シューター/極大射程』とか『ローン・サバイバー』のマークっぽいですけど、中身はどっちかってーと『テッド』のマーク↓ですよこれ。

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まぁ構成がぐちゃぐちゃなのは百歩譲ってよしとしても、アクションまでもガチャガチャなのはどうしようもない。
せっかくイコ・ウワイスをキャスティングしてんのに、チャカチャカ編集とひっきりなしのカット割りでせっかくのイカした格闘シーンも台無しですよもう。(車の窓枠、そういう使い方するんだぁ…(ドン引き)ってところは面白かったけど)

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なんかなー、ピーター・バーグって、バカ映画でも構成の妙はキッチリ押さえるとか、観客に分かりやすく情報を整理して見せるとか、そういう映画としての骨格の部分はちゃんと職人的に仕上げてくれる、そういう部分では信頼の置ける人じゃなかったっけ?今回なんでこんなにダメダメなんだろう。実はオリヴィエ・メガトン(『96時間 レクイエム』の監督。クソ編集のため一部で有名)が撮ってたりせんか?

 

 


あ、あと、これは観た人みんな話題にしてる、問題のあのオチですが、

ヒネればいいってもんじゃねえぞ!!!
この記事ではネタバレしないから詳しくは言わないけどさー、オチから逆算すると敵の行動とか、どう考えたって辻褄合わねえじゃん!どう考えても途中で☓☓してた可能性の方が高いでしょうが!バトルシップミズーリ出撃のほうがまだリアリティあるわ!!まがり間違ってもこういうのは「どんでん返し」とか「うまい脚本」とは言いません!!!ファック!!!!!

 

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あ、そういえば思いっきり続編匂わせてましたね。
どうも本作、マーク・ウォルバーグとピーター・バーグがどうしても作りたくて作った(シリーズ化前提の)作品っぽくて、一般ウケとかどうでもよくて、だから今作に限ってこんなにヘンテコなのかもしんない。確かに一部には熱狂的にウケているようなので、カルト映画化する要素はあるんだろう。
でもこれ興行的にも批評的にもかなりコケてるんだよね…どうすんだろ。

 

 

最後に、本筋とはあまり関係ないんですが、作中、セシウムの所在が分からない(これがそもそもの発端)ってくだりで、マークが原子爆弾の説明をするシーンがありまして。これが、この手のハリウッド映画にしては珍しいくらい、原爆の被害、危険性ってのを仔細に説明してるんですよ(「広島」「長崎」という単語や、被爆者にどんな症状が出たかも写真つきで解説される)。いまだにUSゴジラですら「核」があの扱いなこのご時世、ここだけはちょっと「おっ」て思いましたね。ピーター・バーグ的に、アメリカが作り出してしまった大量殺戮兵器について、何か思うところがあったんだろうか…なんて邪推してみたり。

 

 

 


てなわけで、興味深い部分もなくはないですが、総評としては、かなーり残念な作品でございました。
先述のとおり、好きな人は本当に大好きらしいので、こう評してしまうのは心苦しいのですが、ちょっと映画として許容できない出来栄えですね。

 

「観に行くな」とは決して言いませんが、気軽に楽しめるストレートなアクションものを期待して行くと、間違い無くめくりボディプレスからの小足スクリューで明後日の方向にぶん投げられますので、そういった観客の皆様におかれましてはくれぐれもご注意くださいませ(ヽ´ω`)

 

 

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この絵なんかシュールやな…(´・ω・`)

 

 

(2019.1.20鑑賞)