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『はじまりのうた』-音楽は確かに素晴らしいのだが


『はじまりのうた』(2013・米)

シンガーソングライターのグレタ(キーラ・ナイトレイ)は歌手である恋人に裏切られ、別れを告げる。失意に打ちひしがれる彼女がライブバーで歌っていると、偶然その場に居合わせた落ち目の音楽プロデューサー・ダンマーク・ラファロ)の目に留まる。ダンはグレタの才能を見込んで一緒にアルバムを作ろうと持ち掛けるが、それはニューヨークの街中でレコーディングを行うという前代未聞のものだった。

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55点

 

 


ひとこと:

音楽は良かったです。

 


 『君が生きた証』と併映で、早稲田松竹にて鑑賞してまいりました。
 世間的にもきわめて評価の高い作品だし、その理由も分かるのですが、正直な感想としてはいささか物足りなかったです。

 何が足りないかって、主人公2人の「人生オワタ\(^o^)/」感ですね。
 グレタはスター街道を突っ走る恋人に捨てられ、ダンはかつての栄光にすがりついて酒浸りの日々を送る。文字にすれば両者それなりに悲惨に見えますが、実際のところグレタには帰る家もあるし何日も居候させてくれる友人もいるし、ダンだって落ちぶれたとはいえ彼を慕ってくれるスターや、文句を言いつつワガママに付き合ってくれる家族もいる。ぶっちゃけ2人ともそこまで人生に絶望してるように見えないんですよね。

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 アルバム作ろうぜ!って展開になって以降も、仲間はトントン拍子に集まっていくし、協力者も現れるし、ダンの家族も理解を示してくれるしで展開にあんまり起伏がない。妨害者が現れるとか、ダンが娘と喧嘩しちゃうとか、バンドメンバーが途中で離脱しちゃうとかはないし、基本良い人しか出てこないので物語的なカタルシスには乏しいのです。

 

 唯一、グレタと元恋人デイヴ(アダム・レヴィーン)の関係については映画全体を通じて丁寧に描かれ、クライマックスで結実を迎えます。この最後のライブシーンの描き方キーラ・ナイトレイの表情の変化の美しさ!)は上手かったし、デイヴをただの書き割り的な悪役にせず、「彼には彼の理想の音楽がある」と思わせる演出になっていたのも良かったです。


 うーん、こんなところですかね。音楽映画って普段あんまり観ないんだけど、作中で流れる音楽が素晴らしいのは絶対条件として、加えて強い物語性を求めてしまうのは俺の悪い癖なのかなぁ。この映画の演奏パートが映像的にも音楽的にも一級品であることは認めるし、そこを期待して観に行って間違いはないと思うんだけど、もうひとつ何か欲しかったというのはワガママですかね。

 今回は短めに、こんなところで。