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最後まで下世話なエンタテイメントとして突っ走って欲しかった、映画『SCOOP!』感想(ネタバレなし)



『SCOOP!』(2016・日)

 

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カメラマンの都城静(福山雅治)は、かつて数々の伝説的スクープをモノにしてきたが、今では芸能スキャンダル専門の中年パパラッチとして、借金や酒にまみれた自堕落な生活を送っていた。そんなある日、ひょんなことから写真週刊誌『SCOOP!』の新人記者・行川野火(二階堂ふみ)とコンビを組むことになり、日本中が注目する大事件に巻き込まれていく。

 



 




75点

 

 



ひとこと:

「夜」は面白い、「昼」はつまらない

 

 




遠くから見る東京の夜景は綺麗だが、近づいて見る東京の街はえらく汚い。

チャップリンは「人生は近くで見ると悲劇、 遠くから見れば喜劇」と言ったそうですが、それに近いものを感じますな。


僕は大学入学で上京し、初めて一人暮らしをし始めた夜のことをよく覚えています。
高田馬場で一人寂しく牛丼を喰いながら、妙なタイミングの良さで店内に「今日から俺 東京の人になる~」長渕剛の東京青春朝焼物語が流れ始めてブワッとなったものです。
ああ、俺はとんでもない場所でこれから生活するんじゃのう。こわいよう。

 

 


俺の話なんかどうでもええんじゃ。
さて本作、福山雅治演じる芸能パパラッチが、ひたすらスキャンダルを求めて東京を駆け巡るというお話ですね。

題材から、ジェイク・ジレンホール主演のナイトクローラーを連想した人も多いと思うけど、あれよりはだいぶライトな作り、良くも悪くもアクの薄い、一般大衆向けの作品であります。 

ナイトクローラー [Blu-ray]

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まず褒めときましょうか。
この映画、オープニングが格好良いんですよ。

 

映画が始まるなり劇場内に響き渡る女性の喘ぎ声で度肝を抜かれ、福山雅治の乗ったベンツから東京の夜景へとカメラが移動し、「SCOOP!」の文字がじわ~っと浮き上がるタイトルバック。

 



素敵…(;´Д`)ハァハァ
この斬れ味。これだよ、これ。
そりゃテンションアガるってなもんよ!

 

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(出展:映画ナタリー

前半は軽快な音楽に合わせて芸能界の裏側を覗き見していく展開がテンポよく続き、「なんだかオレ、ヤバい世界覗いちゃってる?」的な背徳感も相まって楽しく見れます。
あーいう、美男美女が赤暗い証明の下でイチャイチャウッフンしてる光景あるじゃないすか。あれムカつきますよねぇ。ましてやそれが芸能人だもんねぇ、ええ。


嫌だねぇ。


うらやましいねぇ。


撮られちまえ!!!撮られちまえ!!!!

 

お前らにプライバシーなんかあるかバーーーーーーーーーーーーーーカ!!!!
(錯乱)

 


はい。
少なくとも前半は、パパラッチという仕事を変に意義深いものとして扱ったりとか、カメラマンの誇りがどうとか、そういう興醒めなお題目を言わずに下品なハイテンションで押し通してくれるので、心置きなく楽しめます。
中盤のカーチェイスとか、最高にバカバカしくて大好きっす。

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(出典:Film Goes with Net

福山雅治は頑張って汚れ役を演じてると思いますが、これ見よがしに下品な言葉を吐きまくるのでかえって演技くさいというか、「汚い男のコスプレしている福山雅治に見えてしまうのがちょっとマイナス。
あとネタバレになるんで詳細は控えますが、後半リリー・フランキーが全部持っていくのはズルいと思いました。ぶっちゃけ「凶悪」より怖かったっす。

 

ちなみにリリー・フランキーが異常に強い件
福山雅治が異常に弱い件は笑っちゃいました。

 

 

 

 


というわけで、前半は快調に進むわけですが…

 

 

 

 

 


はい。
これはもうみんな言ってることだけど、終盤で急激に失速してしまうんです、この映画。ホント監督が変わったのかって思うくらいに。

 

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(出展:映画ナタリー

ネタバレしない程度でほのめかすと、なんか「いいこと」を言おうとするモードになっちゃうんですね。
前半で抑えていたはずの興醒め要素が、どうしたわけかクライマックスで一気に噴出しちゃうの。

 


これはもうテンションだだ下がりですよ(´Д`)y-~~
なんだかなーって。

 


「いいこと」を言おうとしないところがこの映画の面白さだったのに。
最後まで下世話なエンタテイメントに徹してくれればよかったのに。
なんで自分から、その魅力を捨てるような真似をしてしまうんでしょう。

 

 

と、思っていたら。
実はこの映画、原作となる作品がありまして、実質的なリメイクなんですな。
1985年公開の、原田眞人監督作『盗写 1/250秒』ってテレビ映画です。

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これ、この機会に観ようと思って近所のツタヤとか探したんだけど、案の定どこにも置いてなくてですね。

せっかく久しぶりにビデオデッキ引っ張り出そうと思ったのに、ちくしょう。

 


てなわけで原作を観ていないため比較はできないんだけど、ひょっとしてこの終盤の展開も原作に沿ってんのかな?とは思いました。
だとしたらまぁ仕方ないかなーって気もするけど、例えそうだとしても、そこはリメイクにあたって変えて欲しかったですね。

 

まぁ憶測で語っても仕方ないんで、『盗写 1/250秒』を観た方、情報とか頂けたら嬉しいです( ・`ω・´)

 

 


あとね、最後。物語に一応の決着がついた後が長い長い長い。
『渇き。』なみに長い。

久しぶりにこの映画いつ終わるの?って思っちゃいました。

これも大きなマイナスっすね。

 

 

 

 

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(出展:映画ナタリー

 

最初に「ひとこと」で言ったけど、全体を通して
「舞台が夜のパートは面白い、昼のパートはつまらない」
と感じました。

 


中盤の山場である現場検証で犯人の顔を撮る場面も、どちらかというとギャグテイストで思ったほど盛り上がらないし、終盤のシーンがずっと昼なのもなんだか緊迫感に欠けて残念。

 


この映画には「俺たちの仕事はゴキブリ、ドブネズミ以下だ」って印象的なセリフがあります。
だったらやはり、それこそ『ナイトクローラー』よろしく、ほぼ全編を「夜」で押し通すべきだったし、そうしてたらすっごい魅力的な映画になったはず。そうした魅力をかなぐり捨ててでも、あのラストで何かメッセージを伝えたかったんでしょうか、大根監督。

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(出展:映画ナタリー

 

とまぁいろいろ言いましたが、なんだかんだで楽しかったし、けっこう好きな作品ではあります。

誰もが楽しめるエンタテイメントとして、充分合格点。


ただホント、前半のテンションが最後まで維持されていれば、今年の上位争いに食い込んできたのになーと思うと、その惜しさ、残念さが際立つ作品でもありました。

 

以上!