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【新作映画レビュー】圧倒的な低気圧と低偏差値に吹き飛ばされろ!『ワイルド・ストーム』感想

 

 【2019年:2本目】


ワイルド・ストーム

 

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52点

 

 


ひとこと:

古き正しき午後ロー映画。

 

 

 

 

 

予告編とポスターを見てもわかるとおり、本作、紛うことなきボンクラ映画である。

  

ストーム、あんま関係ねえ!


どっちかというとワイルド・スピードだったよ!!


やっぱりかよロブ・コーエンそういう謎の安定感いらない!!!!

 

さて、本国ではコケたうえに日本でも上映館数は少なめ、あげくパンフレットも販売されていないという本編のストーリー同様なんとも雑な扱いの本作ですが、制作費は35億円程度と、この手のディザスター映画にしては低め(『スピード』と同じくらい)。
てなわけでCGも目に見えてちゃちいし、ギャラ高そうなスター俳優も出てません。脚本も明らかにポンコツです。敵も味方もバカ揃い。低いのは気圧というより偏差値です。

 

 

ざっとストーリーを説明するとですね。
巨大なハリケーンが襲来してさあ大変。そんな非常事態の最中、町に所在する財務局の建物を強盗団が襲撃、裁断予定だった古い紙幣(6億ドル!)を強奪しようとするわけですね。で、たまたま外に出ていて無事だったセキュリティスタッフのねーちゃん(マギー・グレイス『96時間』リーアム・ニーソンの娘役の人)と、発電機の修理に呼ばれた電気工の兄(ライアン・クワンテン)&ハリケーンを観測していた気象学者の弟(トビー・ケベル。ちなみにこいつら兄弟は幼少時に父親をハリケーンで亡くしてる)のトリオが協力してそれを阻止すると、まあこういう流れです。

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ひとつひとつツッコミ入れていきたいんですが、まずこの映画、冒頭からしていきなり酷い。


冒頭はこれ、過去話なんですよ。幼い兄弟が目の前で父親の死を目撃してしまうという、一応、主人公のその後のトラウマともなるシリアスなシーン。のはずなんだけど、なんかCGは最近の邦画でももうちょっと頑張ってるぞってレベルでちゃちぃし、親父が死ぬシーンは完全にギャグだし(あれ笑うよね)、この手の映画でありがちな「雲の形が死神のように見える」演出の、描写がストレートすぎるがゆえの凄まじいまでのダサさとか、なんとなく実写版ハガレンの冒頭を連想せざるを得ないゆるゆる&ポンコツぶりで、この時点でもう映画の行く手にハリケーンさながらの暗雲が立ち込めるわけですよ。もう心配になるレベルで。

 

 

次に、敵さんの作戦なんですが、ザル。くっそザル。
スーパーハカーがセキュリティシステムを掌握→内部の協力者(こいつが敵のボス)が諸々お膳立て→襲撃って流れはお約束なのでいいとして、その前提がハリケーン頼みってどうよ。


しかもこのハリケーン、事前の予報ではたいしたことにはならないはずだったでしょ。実際は気象学者の弟の警告どおり大事になったから良かったものの、予報どおりあっさり通り過ぎてしまったらどうするつもりだったんだろうこの人たち。町の警官も全員グルだからなんとかなったのかとも思うけど、だったらわざわざハリケーンの日狙う意味なくね?ていうか警察グルなら真正面から襲撃なんかせず、もっと良い作戦いくらでもあっただろうに。 

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あと敵の皆さん、なんか知らないけど、やたら情緒不安定。
粗暴なイキリ野郎(いかにも終盤でヒロインに殺されそうだし実際死ぬ)が一匹いるのはいいとして、敵ボスのコナーっておっさん(演:ラルフ・アイネソン。『カメラを止めるな!』の濱津隆之さん似)も無意味にキレるわ暴れるわで小物臭が半端ない。仲間がどんどんアホな死に方してしょんぼりしてるところとか彼なりに責任感じてるっぽくて少々気の毒でした(一応最初はひとりも死人出さないように配慮してたし)。やっぱ低気圧が近づくといろいろ辛いんでしょうか。僕も関節痛くなったりベッドから起き上がれなくなるので気持ちは分かります。唯一、ハッカーのバカップルコンビはなんか癒やされました。

 

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あと主人公サイド。こいつらもこいつらで問題が多い。
中盤のショッピングモールでちょっとした見せ場(モールの天井のガラスを破壊することによって気圧差で敵を上空へ吸い上げるってくだり)があるんですが、あれ絵的にはそりゃアガるんだけど…いやいや兄貴はどうすんのよって。お前らは命綱つけてるからいいけどさ、特に作戦とか知らされていない兄貴もその場に敵と一緒にいるわけですよ。案の定、吹き飛ばされる寸前でなんとか兄貴は助かるわけですが、その後の主人公とヒロインが兄貴の心配一切しないまま放置して行動し続けるのもすごい(「遅れてるんだろう」くらいにサラッと流してたよね)。とにかくこの映画、人命軽視しまくり。

 

あとクライマックスの見せ場であるカーチェイスね。
あれも楽しいっちゃ楽しいんだけど、もうどっから突っ込んだらいいか分かんねえくらい作戦(あれは作戦なのか)がテキトーでして、もはや何が起こってんのか、こいつらは何がしたいのかよく分かんない。あと俺よく知らないんだけど、ハリケーンのアイウォール(台風の目)ってあんなに境界が明確なもんなの?デイ・アフター・トゥモローの、れいとうビームばりに人間を襲ってくる冷気を扉締めて防御するみたいな変なシーンを思い出しましたよ。

 

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ちなみに、ポスターにもなっているこのカッチョイイ装甲車ですが、中盤で水没してお陀仏になるので、クライマックスのカーチェイスには参加しません。

 

 

FUCK!!!!!(バーーーン)※机を叩く音

 

 

その他、細かいツッコミどころをあげればキリがない。
ヒロインが過去に何かあったことを一瞬匂わせながらその後の展開に一切絡んでこないところとか、金庫室のパスワード画面のソシャゲガチャみたいなワクワクギミックはなんだったんだとか、財務局とショッピングモールと兄貴の工場を短時間で行ったり来たりするおかげで「この町狭くね!?」って疑問が生じるとか(建物全部100メートル圏内にありそう)、登場人物全員自分の口から発せられる専門用語の意味をまったく理解してなさそうなところとか、どうでもいいシーンで感動げな音楽を流すぶっ飛んだ選曲センスとか、ホイールフリスビーとか、そのヌルさ、ゆるさ、適当さは圧倒的、もう凄まじいものがあるわけです。

 

 

 


さて、いろいろ述べてきましたが、

 

 


以上がこの映画の良いところです。

 

 
なんていうんですかね、こういう、一昔前の大味でおバカなアクションパニック超大作みたいな映画って最近あんまり作られなくなっちゃったじゃないスか(去年の『ジオストーム』もあんまりハジけてなかったし)

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そこへどうだこの映画は、お約束に次ぐお約束、実家のコタツでみかんを食べているかのような安心感。このゆるさ、テキトーさ、ガバガバさが心地良い。こういう午後ローでかかってそうな映画にまだ居場所があったんだ、こんな気持ちになれただけでもこの映画に1800円払って良かったと思ってるんですよ、俺は。


しかもこれ、日本公開が1月4日。お屠蘇気分で観に行くにはピッタリじゃないでしょうか。

 

 

欲を言えば、せっかく「裁断機」という心ときめくガジェットがあるんだから、あれはラスボスへのおしおき装置としてとっておくべきだったんじゃないかなーなんて細かい不満もあったり(・ω・)

 

何はともあれ、ボンクラ映画好きなら週末の暇つぶしの選択肢に含めていいであろう一本です。(オススメとは言わない)

 

まぁでも、普通に強風映画が観たいなら、『ツイスター』か『イントゥ・ザ・ストーム』観とけば十分じゃないかなあとは言い添えておきます。

ツイスター(字幕版)

ツイスター(字幕版)

 

 


(2019.1.17鑑賞)