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【書評】社会学の古典にして刺激的な謎解き本-デュルケーム『自殺論』

 

自殺論 (中公文庫)

自殺論 (中公文庫)

 

 

 あくまで個人の問題と考えられていた「自殺」という現象を社会学的に考察し、その社会における集合的傾向との因果関係を論証した、社会学における古典。

 統計を駆使して因果関係を論証していく、というのは今日普通に用いられている社会学の方法であり、デュルケームはこれを百年前に行なっていた。ありがちな統計至上主義に陥らず、あくまでツールとしての使用を重視し多種の統計と比較するなど、念入りに史料の吟味を行っている点もポイントだ。

 自殺の種類を「自己本位的自殺」「集団本位的自殺」「アノミー的自殺」に分け、社会の道徳的構造がこれら潮流を決定し、自殺の傾向を作り出すという論理構造そのものはシンプルで明快。アノミー的自殺の項では不景気・好景気いずれの場合でも自殺が増加するという意外な事実から入り、制御不能となった人間の欲望が自殺を引き起こすと結論づけたり、別の項では古代ギリシア・ローマにおいて許可された制度としての自殺の存在が指摘されたりと、雑学的興味を惹く要素もある。

 予想されうる批判をあらかじめ提示し、あくまでロジカルにそれに反論していく手法が繰り返し取られているが、このへんは推理小説の謎解きを見ている ようで結構面白い。もっとも、デュルケームに対しては当然さまざまな角度からの批判も存在する。ざっと読んだ感じでもあからさまに強引な論法が無いわけではない (とりわけ、最終的に提示される解決策については著しく疑問符が付く)。

 分厚いうえに言い回しがいちいちまどろっこしいので、読みやすい本ではない。社会学を本格的に学びたい人、あるいは「自殺」という概念に偏執的な興味を持つ人であれば、非常にエキサイティングな読書になるかもしれないけれど。